透明度の良い日、目の前をウミガメがゆっくり泳いでいく。
夢中でシャッターを切りました。
でも家で写真を開くと、全体が青くて、なんだかぼんやりしている。
- 海の中で見た色と、写真の色が違う
- 近づいたつもりなのに、被写体が小さい
- ブレていて、拡大すると使えない
- 設定をどこから触ればいいのか分からない
このように感じている方も多いと思います。
結論から言うと、水中写真は「撮影で決めること」と「レタッチで直せること」がはっきり分かれます。
青かぶりは、後からでも直せる部分です。
ブレとピントは、後からでは直せません。
この切り分けを知らないと、水中で直す必要のないものに時間を使ってしまいます。
限られた潜水時間の中では、これが一番もったいないことです。
逆に、すでにマニュアル撮影に慣れている方、ストロボを自在に扱える方には目新しい内容はありません。
この記事を読めば、次のダイビングで何に集中すればいいかが決まります。
細かい設定の手順は、それぞれの記事で詳しく解説しています。
水中写真は「撮影で決めること」と「レタッチで直せること」に分かれる
最初に押さえたいのが、この切り分けです。
ここが決まると、水中で何を優先するかが決まります。
| 項目 | 後から直せるか |
|---|---|
| 青かぶり・色 | 直せる |
| 明るさ | ある程度直せる |
| 浮遊物(マリンスノー) | 量によっては直せる |
| ブレ | 直せない |
| ピント | 直せない |
| 被写体との距離 | 直せない |
色は、RAWで撮っていれば後からいくらでも追い込めます。
水中の青かぶりは、レタッチが最も得意とする領域です。
一方で、ブレた写真とピントを外した写真は、どうやっても戻りません。
被写体との距離も同じです。
色で悩むのは陸に上がってからで大丈夫ですよ。
【設定】カメラはマニュアルモードで撮る
水中では、カメラ任せの露出が当てになりません。
理由は、背景の海の明るさが場所ごとに大きく変わるからです。
青い水を大きく写せばカメラは暗く写そうとし、岩陰に向ければ明るく写そうとします。
被写体の明るさは変わっていないのに、設定だけが勝手に動きます。
だから水中写真はマニュアルモード一択です。
初心者がいきなりマニュアルは難しいのでは?
答えは「NO」です。
水中は陸上より条件が単純で、一度決めた設定をほとんど変えずに撮れます。
むしろ設定が動かない分、マニュアルの方が結果は安定します。
具体的な決め方は、こちらの記事にまとめました。
>>水中写真はマニュアル一択 ! マニュアルモードの設定方法
ホワイトバランスは撮影時に追い込まなくてよい
RAWで撮るなら、ホワイトバランスは後から自由に変えられます。
水中で細かく調整する必要はありません。
ただし、機種ごとの傾向を知っておくと後の作業が楽になります。
使用機材での実際の挙動は、こちらで検証しました。
>>EOS R5(R6)をダイビングで使うときのホワイトバランス設定検証【水中マクロ撮影編】
ピントは最後の微調整を手動でできるようにしておく
マクロ撮影では、オートフォーカスが狙った一点に来ないことがあります。
ハゼの目に合わせたいのに、体の中央に合ってしまう。
水中ではよくある場面です。
この対策が、オートフォーカスのまま手動で微調整できる設定です。
>>オートフォーカスをマニュアルで微調整する方法、フルタイムマニュアル。マニュアルフォーカスのコツ。
【ライティング】ストロボで色とシャープさを取り戻す
水中で色が失われるのは、水が光を吸収するからです。
赤い光から順に失われ、深くなるほど青一色に近づきます。
この失われた色を取り戻す道具がストロボです。
被写体に自前の光を当てれば、水に吸われる前の色がそのまま写ります。
ストロボの役割は、色を戻すことだけではありません。
光を一瞬だけ当てることで、被写体の動きを止められます。
ブレは後から直せません。
だからストロボは、色のためだけの道具ではありません。
ストロボの設定方法は機種ごとに違う
ストロボは、機種によって設定の考え方も操作方法も変わります。
お使いの機種に合わせて読んでください。
>>INON 水中ストロボのマニュアル設定方法
>>イノン ストロボ Z-330をマニュアル設定で使う方法
浮遊物が写り込むときは光の向きを変える
ストロボを正面から当てると、水中の浮遊物まで光ります。
白い粒が画面いっぱいに散る、あの状態です。
対策は、光を斜めから当てて浮遊物に当てないことです。
拡散フィルターの有無でも結果が変わります。
>>イノンZ-330の拡散フィルターは付けるべきか。水中写真で比較検証。
浮遊物は少しなら後で消せるけど、画面いっぱいだとお手上げだからね。
【実践】被写体別の撮り方
設定が決まったら、あとは被写体ごとの動き方です。
相手によって、近づき方も待ち方も変わります。
どの被写体でも共通するのは「近づく」こと
被写体との間にある水は、それ自体が色を吸い取るフィルターです。
距離が離れるほど、色は青に沈み、輪郭もぼやけます。
ストロボを使う場合も同じです。
光が届く距離には限りがあり、遠ければ被写体まで光が回りません。
後から拡大して切り抜けばいい、とはいきません。
拡大すれば、失われた色とぼやけた輪郭がそのまま大きくなるだけです。
迷ったら、もう一歩だけ寄ってみてくださいね。
すぐ隠れる小さな魚(ハゼなど)

ヤシャハゼやネジリンボウは、近づくと巣穴に隠れてしまう魚です。
いきなり寄らず、距離を詰める順番が結果を分けます。
>>ヤシャハゼ、ネジリンボウ。すぐ隠れるハゼを撮影するコツ。
大きくて逃げやすい魚(ロウニンアジなど)
回遊魚は根の周りを回るので、通り道さえ読めればチャンスは何度も来ます。
追いかけると逃げるので、待ち方が結果を分けます。
>>釣り人の憧れ巨大ロウニンアジに大接近。逃がさず撮影するコツ。
逆光を活かす(シルエット)

ストロボを使わず、逆光で影として見せる撮り方です。
太陽と被写体と自分の位置関係で決まります。
あえてストロボを使わない(濃い青を出す)

ストロボを止めると、海の青がそのまま濃く残ります。
色を取り戻す撮り方とは逆の発想です。
>>水中マクロ写真であえてストロボなしで撮影して濃い青を表現
同じ被写体で写真が似てきたとき
毎回同じ構図になるのは、目線の高さが固定されているからです。
視点を変えるだけで、同じ場所が別の被写体になります。
【機材】撮影の前に決まってしまうこと
機材は、水中に入る前に結果の一部を決めてしまいます。
特にレンズは、潜ってからは交換できません。
使用機材の選び方と、実際に使って分かったことをまとめています。
- >>Canon EOS R5用水中ハウジングはSEA&SEAがおすすめな3つの理由
- >>ダイビングならCanon EOS R6よりR5がおすすめな4つの理由
- >>ダイビングでCanon R5+RF100mmマクロ撮影。EF100mmよりおすすめの理由。
- >>Canon EOS R5でAPS-Cにクロップしてマクロ撮影するときの注意点。EF-S 60mmが使えない理由。
- >>家でできる!ダイビング用ハウジングの水中重量を調整する方法
撮影データの記録形式も、後の自由度を左右します。
圧縮RAWがどこまで使えるかは、実際に比較しました。
>>C-RAWとRAWの画質の違いを検証した結果
【仕上げ】撮影で取り切れなかった色はレタッチで直す
冒頭の切り分けに戻ります。
色と明るさは、撮影で完璧を目指さなくて構いません。
水中で色を追い込む時間があるなら、ブレない体勢を作る方が得です。
色は陸に上がってから、落ち着いて直せます。
青かぶりの直し方から作品としての仕上げまでは、レタッチ側のまとめ記事で解説しています。
よくある質問
ストロボがなくても水中写真は撮れますか?
撮れます。ただし撮り方が変わります。
浅い水深で太陽光を使うか、青を活かす表現に振ってください。深い場所で赤を出すなら、ストロボが必要です。
JPEGで撮ってはいけませんか?
RAWをおすすめします。水中写真は青かぶりの補正量が大きいためです。
JPEGは色が破綻しやすく、直せる幅が狭くなります。
何から練習すればいいですか?
止まることです。中性浮力が安定しないと、設定を詰めてもブレます。
カメラの操作より先に、狙った場所で静止できる状態を作ってください。
【まとめ】水中で守るのはブレ・ピント・距離の3つ
水中写真がうまくいかない原因は、たいてい色ではありません。
色は後から直せるからです。
この3つを守れれば、その日の写真は残ります。
色が気に入らなくても、後から何度でもやり直せます。
次のダイビングでは、まずマニュアルモードの設定だけ決めていってください。
そこが決まると、残りは被写体に集中するだけになります。
