ヤシャハゼやネジリンボウはきれいな模様でダイバーに人気のハゼですが、写真を撮ろうとするとすぐに穴の中に隠れてしまいます。
この記事では、そんなすぐに隠れてしまうハゼを撮影するときのコツを紹介します。
隠れないように撮影できるということは、ハゼにもストレスを与えていないということなので、ぜひ実践してみてください。
ハゼを撮影するコツ
砂地のハゼは、大きな動きをするとすぐに隠れてしまうので、なるべく動かずに慎重に行動する必要があります。
撮影するときのコツは、
- 近づく前にカメラの設定を決める
- 撮影しながら少しずつ近づく
- シャッターを切る指以外動かさない
1つずつ説明していきます。
近づく前にカメラの設定を決める
ハゼを見つけたら、十分離れた状態で、カメラの設定を確認します。
近づいてからカメラやストロボを調整していると、その動きだけで隠れてしまいます。
砂地に住んでいるハゼを撮影するとき難しいのは、白い砂がレフ版のような働きをして、通常の設定だと明るくなりすぎる場合があることです。
せっかくうまく近づけても、いざシャッターを切ると、下の写真のように真っ白になってしまっては台無しです。
こうなってしまってから、慌ててカメラの設定、ストロボの位置や光の強さを調整していると、それだけでシャッターチャンスを逃してしまいます。
撮影できる最適な距離まで近づいたら、後はシャッターを押すだけで良いように事前に設定を整えておきましょう。
調整のために被写体を探していたら時間がもったいないので、何もない砂地を撮影するだけでいいです。
大事なのは露出(明るさ)設定だけなので、被写体は特に必要ありません。
砂が白飛びしないように撮影できればそれで良いです。
撮影しながら少しずつ近づく
初めてヤシャハゼやネジリンボウを見ると、そのあまりのかわいさに、何としても写真に収めたいと思って、一気に近づいてしまいがちです。
でも、突然向かってくる大きな人間にハゼは敏感に反応します。
動いていると認識されないくらいゆっくり近づきます。
このとき、証拠写真でもいいから1枚でも写真が撮れていたら、心に余裕を持ってゆっくり近づくことができます。
初めから理想的な距離に近づいて撮影しようとせず、少し近づくごとに撮影していきましょう。
少しずつ近づきながら撮影するとこんな感じです。
初めはすごく遠くて、ストロボの光も届いていません。
でも、ストロボの向きや強さは変えてはいけません。
ここで変えてしまうと、近づいたときにまた設定を変える必要があり、その動きでハゼが隠れてしまいます。
この段階では証拠写真でいいので、写りは気にせず、撮影して近づいてを繰り返します。
様子を見ながら近づいていきます。
共生しているエビの動きも見て、警戒されていないか注意しながら近づきます。
ここまで近づけました。
トリミング、加工なしの写真です。
近づく前にカメラの設定をしっかり決めているので、シャッターを押すだけでこんなにきれいに撮れます。
この距離まで近づいたときにベストな状態になるようにカメラとストロボを設定していました。
カメラ:Canon EOS 80D
レンズ:EF-S 60mm F2.8 マクロ
設定:ISO 100, F5.6, SS 1/250
ストロボ:S-2000 2灯
設定:マニュアル発光, -4.5EV
シャッターを切る指以外動かさない
ここまでで言ってきたように、とにかく動かないことが重要です。
作品として仕上げるためには、構図や露出設定をいろいろ変えて撮りたくなると思いますが、接近している状態で構図調整のためにカメラを大きく動かしたり、一度ファインダーから目を離してカメラの設定を変えたりすると、ハゼが隠れてしまいます。
基本的には、シャッターを切る指以外動かさないようにします。
慣れてくれば、ファインダーを覗いたままの状態で、絞りやシャッタースピードを変えることができ、撮影した画像を見なくても適正露出に設定することができるようになります。
そうなれば、近づいた状態で自由にカメラの設定を変更することができますが、それができないうちは、とにかくピントを合わせることだけに集中してシャッターを切る以外の動きはしないようにします。
撮影した画像を見なくても適正露出にするためには、マニュアル設定の基本をマスターする必要があります。
こちらの記事を読めばマニュアル設定のやり方がわかると思います。
レタッチで補う
いい写真が撮りたいからと言って、強引に近づくとハゼは隠れてしまいます。
距離が遠くて鮮明に写っていないとか、構図がいまいちという場合でも、レタッチである程度補うことができます。
後で何とかなると思えば、気持ちに余裕ができて、強引に近づくこともなくなると思うので、レタッチは邪道だと思わずに積極的に使いましょう。
遠くから撮影した写真を補正
先ほどの近づきながら撮影した写真の3枚目。
こちらの写真をレタッチで補正してみます。
まだ距離があるので、ストロボの光が十分当たっていなくて、青被りしています。
でも、レタッチすればこうなります。
トリミングで拡大した後、下記の設定をしました。
- 露光量 +0.80
- かすみの除去 +20
- 自然な彩度 +25
- 色温度 7600K
- 色かぶり補正 +129
カメラの設定は近づいて撮影できたときを想定しているので、遠くだと暗いです。
このため、露光量を上げて明るくします。
さらに、遠くからの撮影でモヤっとしている感じを補正するためにかすみの除去を適用しました。
ストロボが当たっていないため、色が失われた状態になっているので、彩度、色温度、色かぶり補正で本来の色を再現しました。
構図を調整
近づいた状態でカメラを動かすとハゼが隠れてしまうので、構図もレタッチで調整します。
例えば、トップ画像に使ったこちらの写真。
ヤシャハゼの幼魚とネジリンボウがちょうど交差していて、いい瞬間が撮れました。
でも、実はこの写真、トリミングする前はこんな感じです。
構図のバランスが悪いですよね。
撮影時はとにかくピントを合わせることに集中して、なるべく余計な動きをしないようにしていたのでしょうがないです。
ヤシャハゼの目にピントを合わせるために、ヤシャハゼを中心に置いた構図で撮影し、ネジリンボウがちょうどいい位置に来た瞬間を狙いました。
ヤシャハゼとネジリンボウ両方の目にピントが合っていて狙い通りです。
しっかりピントが合っていれば、多少トリミングしても問題ないので、レタッチで自由に構図を変えることができます。
この写真は、被写体が縦長なので、縦位置がいいです。
横位置の写真をトリミングで縦位置にするなんて強引だと思うかもしれませんが、全然問題ありません。
むしろ、撮影時にカメラを縦にしたり横にしたり大きく動かす方が問題です。
縦位置で撮影するためにはストロボの位置も変える必要があるので、この距離でやっていたら確実にハゼがいなくなってしまいます。
まとめ
すぐに隠れてしまうハゼを撮影する方法を紹介しました。
コツはとにかく動きを少なくすることです。
そのために、近づく前に万全の準備をし、近づいたらシャッターを押すだけでいいようにします。
また、レタッチである程度補正できることも考慮して強引なアプローチをしないように気を付けます。
うまく近づくことができれば、いい写真は撮れるし、ハゼにも一緒に潜ったメンバーにも迷惑にならないので、ぜひ実践してみてください。
そして、離れるときもちゃんとゆっくり慎重に離れましょう。
近づくときは慎重に近づいて、離れるときに思いっきりフィンキックしてしまったら意味がないので。
では、良いダイビングを。