ダイビングをしていると、普段スーパーとかで目にすることのない珍しい魚に出会うことが多いですが、普通に食用としてメジャーな魚に出会うこともあります。
でも、食用になっている魚をダイビング中に見たとしても、「おいしそう、食べたい・・・」と思うことはほとんどありません。
食用の魚は地味なものが多いので、ほとんどの場合は何も考えず素通りします。
食用で人気の魚だけど
この写真のように壮大な群れに出会ったときは、その群れの大きさに圧倒され、自然のすごさに感動はしますが、これを見て、
「イワシ大漁!!全部食べつくしたい」
なんてことは思いません。
食べたいという感情より、これほど巨大な群れを作り、身を寄せ合うことで天敵から身を守っているというイワシの生き抜く知恵と生命力を感じます。
この写真、なんとなくピントが合っていないように見えませんか?
イワシの群れなのはわかるけど、なんとなくどこに焦点を合わせていいかわからないような感覚です。
でも、写真を拡大すると、しっかり中心の魚にピントが合っています。
この、群れが多すぎて焦点が合わない感覚。
これが、イワシが巨大な群れを作る理由です。イワシを襲う魚も、これだけ密集しているとどこに狙いを定めていいかわからず、狩りの成功率が下がるのです。
実際、このような群れの近くには大型の魚が回遊していることが多いのですが、捕食が成功した瞬間を見ることは珍しいです。
次の写真は、アジです。
とてもよく太った大きいアジです。
ストロボの光を反射して白く輝くその姿は「ひかりもの」の名にふさわしく、つややかな肌は鮮度の良さを感じます。
生きてるから鮮度の良さは当たり前ですけど。
こんな、スーパーに並んでたら、朝どれ超鮮度の大物アジですが、ダイビング中に見てもおいしそう、食べたいとは思いません。
後ろに写っているサメの写真が撮りたいのに、アジ邪魔だなぁくらいにしか思わないです。
続いての写真は、イワシとサバです。
先ほどのアジと合わせて、回転ずしなら「ひかりもの三種盛り」として人気の逸品間違いなしのところですが、やっぱりダイビング中に見てもおいしそうとはなりません。
通常、イワシはイワシ、サバはサバで群れを作りますが、カジキマグロに追われてパニックになったイワシとサバが混合の群れを作っています。
なんとなくのんびり漂っている魚の群れに他の魚が紛れていることはよくありますが、このイワシとサバの群れのように、同じくらいの規模の2種の魚の群れが一丸となって逃げる様子というのは初めて見ました。
それだけ、カジキによる捕食活動が小魚にとって脅威で、生き残るために種を超えて身を寄せ合っているのだと思います。
カジキとイワシ、サバの命がけの必死の攻防が目の前で繰り広げられます。
当然、「おいしそう・・・」なんて思っている余裕はありません。
これだけは水中で見ても食べたくなってしまう
今まで見てきたように、普段どんなに美味しくいただいている魚でも、水中で見ると食べたいと思うことは少ないのですが、唯一、水中で見ながら食べたいと思ってしまうものがあります。
それがこちら。
アオリイカです。
普段はあまり近くで見ることができませんが、5~7月になると水中に沈めた産卵床に卵を産みに集まってきます。
多くのアオリイカが入り乱れるその様子は大迫力です。
自分の子孫を残すため、他のイカに負けないようにとイカ同士の激しい攻防が行われます。
すでにペアになっていても横取りしようと狙っています。
今まで見た「ひかりもの三種盛り」と同じく、生き物の生きる力を感じる迫力のシーンですが、このアオリイカの産卵だけは見ているその瞬間から、「おいしそう、食べたい」と思わずにいられません。
下の写真を見ても、「このひらひらしてるエンペラ食べたい」と思ってしまいます。
通常は近づくことができないアオリイカですが、産卵行動に必死になっているときは、かなり近くまで寄れます。
目の前に迫る大型のイカは本当に大迫力です。
間近に見るイカは、透き通った身体がよくわかり、それはもう完全に透き通ったイカ刺しです。
下の写真はゲソまできれいに透き通って、完全に丸ごと食べれるイカの生き造りです。
ダイビング中に口の中入っているのは、空気を吸うためのマウスピースですが、脳内変換されてイカの甘みが感じられます。
イカの産卵を邪魔しないようにと気を使いながらの撮影で、神経を使うダイビングですが、イカの甘みが頭から離れることはありません。
こうして記事を書いている今もイカが食べたくなってきました。
番外編
海は不思議がいっぱいです。
本当は食べられないのに、おいしそうでたまらないものもあります。
その1つが、こちらの「霜降りすき焼肉」です。
きめ細かく入ったサシは高級牛肉の証。
見た瞬間から頭の中は肉汁でいっぱいです。
これ、実は海藻なんです。肉汁は一滴も含まれていません。
ダイビングをしていても岩に生えている海藻に焦点を当てることはないので、この海藻の名前もわかりませんが、とにかく水中で見つけた瞬間から霜降り肉にしか見えなかったです。
何百回潜っても、いつも新たな発見があります。海は不思議がいっぱいでおもしろいですね。